基礎知識

熱電対用保護管

熱電対用保護管とは

熱電対用保護管とは測温接点および素線が、測定対象物、雰囲気などに直接接触しないように保護するためにつける管です。保護管の選定は、その使用場所の条件を考慮した上で最適なものを選び出すことが大切であり、測温技術の重要なポイントとなります。保護管には金属保護管と非金属保護管があり、詳細を下記に示します。

1. 金属保護管

金属保護管として使用される材料にはオーステナイト系ステンレス鋼であるSUS304等が多く使用され、その他高温において酸化、還元いずれの雰囲気にも強いINCONEL®600や低温における耐食性が極めて優秀なTiなど多くの材料があります。一般的に規格化されたパイプを用いて先端を溶接で封ずることによって保護管として使用できます。また、耐食対策としてガラスライニングや耐摩耗対策としてステライト加工など表面処理が施されることもあります。

材質の種類 型番 使用温度(℃)※1 特性
SS400 400 酸化 600
還元 800
耐酸性や酸化に弱いが還元に強い。
SUS304 304 980 耐熱、耐食性に優れている。
Niを含んでいるのでイオウ還元ガスに弱い。
SUS304L 304L 980 SUS304のカーボン量を少なくしたもの(C=0.03%以下)で、溶接の熱影響によって生じやすいCr炭化物の析出が少ない耐粒界腐食性材料である。
SUS321 321 980 Tiを含みSUS304より耐食性は増す。
特に溶接後の粒界腐食防止に優れている。
SUS316 316 980 Moを含み耐熱、耐酸、耐アルカリに優れている。
SUS316L 316L 980 SUS316のCの量を少なくしたもので、耐粒界腐食性材料である。
SUS310S 310S 1000 Ni-Crの含有率が高く、高温での酸化性に強い耐熱鋼である。
SUS347 347 980 Nb-Taを含みSUS304より耐食性を増し、粒界腐食防止に優れている。
SUH446 446 980 27Cr鋼で耐熱材料である。
50Co30Cr 50 酸化 1150
還元 1200
Co基合金で耐熱、耐摩耗性に強く、サルファーにも強い耐熱合金である。
INCONEL®600※2
(JIS:NCF600)
600 1050 高温において酸化、還元のいずれかの雰囲気にも強い。
INCOLOY®800※2
(JIS:NCF800)
800 870 高温耐酸化性に優れており、特に高温腐食に対してSUS304の約10倍の寿命があり、熱衝撃にも強い。
カンタルAF※3 KA 1100 高温での酸化には強いが、再結晶して脆くなる。
80Ni20Cr NC 1100 高温酸化雰囲気中では、高温強度・耐食性共によいが、硫化雰囲気には不適当である。
クリマックス※4 KU 1200 60%Crと少量のW、Nb、Tiを含む合金で、溶融化学物質、スラブガスに対する耐食性に優れ、溶融銅などの金属侵食に強い。
ハステロイB※5
(Hastelloy®)
HB 酸化 500
還元 760
Ni基合金で耐熱、耐食性に優れ、特に塩酸・硫黄に対して優れた抵抗を示す。
ハステロイC※5
(Hastelloy®)
HC 1000 高温において酸化・還元雰囲気に対して強く、塩素ガスにも強い。
ハステロイX※5
(Hastelloy®)
HX 1100 高温でも強度が大きく、主として耐熱材であり、加工性・溶接性が他のハステロイより優れている。
ヘインズアロイ25※5 HY 酸化 810
還元 980
Co基合金で高温における酸化・耐火性に強い材料である。
チタン TI 酸化 250
還元 1000
低温における耐食性はきわめて優秀であるが、高温では酸化され脆くなる。
モネル※2
(Monel®)
MN 酸化 500
還元 600
Ni67~70%とCu-Feからなり、高温・高圧に強く耐食性にも優れている。
タンタル TA 酸化 300
還元 2200
多くの酸に強い耐熱材料であるが、空気中では高温で脆くなる。

その他、特殊材質保護管も取扱っております。

※1 使用温度は、雰囲気により異なります。
※2 インコネル「Inconel」、インコロイ「Incoloy」、モネル「Monel」は、Special Metal Corporationの登録商標です。
※3 カンタルAFは、KANTHAL社の登録商標です。
※4 クリマックスは、(株)栗本鐵工所の登録商標です。
※5 ハステロイ「Hastelloy」、ヘインズアロイ25は、Haynes International, Incの登録商標です。

2. 非金属保護管

非金属保護管として使用される材料には高温強さ、電気絶縁性や耐摩耗性に優れているアルミナ(Al2O3)、熱伝導性や急熱、急冷による熱衝撃抵抗性に優れているシリコンカーバイトや酸性に強い石英ガラス等があります。主に高温測定用熱電対の保護管として使用されます。

材質の種類 型番 使用温度(℃)※1 特性
石英ガラス QT 1000※2 透明、不透明があり、前者が熱耐性にややまさる。
急冷、急熱に耐えるが、強度は小さい。アルカリに弱く酸に強い。
水素、還元ガスには気密性が劣る。
磁器2種 PT2 1400※2 高アルミナ(Al2O3)磁器質。
熱間の軟化が少なく、熱ショック抵抗が良好である。
磁器1種 PT1 1500※2 半融アルミナ(Al2O3)を焼結したもので、PT2よりも優れている。急冷、急熱にやや弱く、溶融金属、燃焼ガスに強い。
磁器特殊 PT0 1600※2 PT1より耐熱性及び化学安定性に優秀である。
再結晶シリコンカーバイト Y1 1600 気密性、熱ショックに強く、高温下耐食、耐磨耗が優秀で1,400℃までの酸化、還元両雰囲気中での測温用。
自己結合シリコンカーバイト Y2 1650 中性雰囲気中では2,200℃まで測温ができ、酸、アルカリに対しても侵され難い。
シリコンカーバイト Y3 最高1500
常用1000
熱伝導性が酸化物系のものに比べよい。
急熱、急冷による熱衝撃抵抗性に優れている。
Y4 1550 上記同様すぐれた性能を持ち、Si3N4を含んでいる。
特に溶融アルミニウム測温用に適している。
ジルコニア ZR 1800 再結晶アルミナと同程度の耐熱衝撃性で気密質である。
強アルカリ、塩やアルカリ金属以外の溶融金属に対し、化学的に安定。

その他、特殊非金属保護管も取扱っております。

※1 使用温度とは空気中で長時間の使用に耐える温度をいう。
※2 JIS R 1401-1987による。

金属保護管の表面処理

耐食用

種類 厚さ(mm) 構成 最高使用温度(℃) 特性
ガラスライニング t1~1.2 普通鋼+ガラス 450 酸およびガス体の侵入の保護に良好。
ホウケイ酸ガラス(硬質ガラス)に限る。熱ショックに弱い。
フッ素樹脂コーティング t0.3 金属+フッ素樹脂 120 濃塩酸、濃硫酸、濃硝酸等には、温度条件により使用可能。

 

耐磨耗

金属保護管の耐摩耗性には、ステライト®※1加工、コルモノイ※2加工、タングステン加工、その他の処理をおこなっております。詳しくは、ご要求時にご相談下さい。

※1 ステライトは、ケナメタルステライトグループの登録商標です。
※2 コルモノイ「COLMONOY」は、Wall Colmonoy社の登録商標です。