利用分野

校正

校正とは、温度計や温度指示計器が表示する値と標準器を用いた値との関係を確定する作業です。校正を行うことで使用している温度計や温度指示計器が示す温度の特性を確認することができます。
校正作業は温度計や温度指示計器の現状を明らかにしますが、調整や修理といった現状を変更する作業は含まれないことに注意してください。

校正方法

温度計や温度指示計器の校正方法には定点校正と比較校正があります。

  • 定点校正
    定点セルを用いて既知の特定の温度(温度定点)を校正対象の温度計で測定し、既知の温度との関係を求めます。
    精度の高い校正が可能です。
  • 比較校正
    高温槽を用いて任意の温度を標準温度計と校正対象の温度計で同時に測定し、標準温度計との関係を求めます。
    任意の温度で校正が可能です。

トレーサビリティとは

校正により温度計や温度指示計器と定点セルや標準温度計との関係を求めましたが、校正で使用する定点セルや標準温度計も温度計や温度指示計器の一種ですのでこれも校正する必要があります。このような校正の連鎖は最終的には産業技術総合研究所(NMIJ/AIST)が管理している特定標準器にたどり着きます。トレーサビリティとはこのように校正の連鎖が切れ目なくつながっていて日本の国家標準である特定標準器まで追跡(トレース)可能になっていることをいいます。トレーサビリティがあるということは間接的に特定標準器との関係を求めることができるので国家標準との差を知ることができます。

JCSSロゴマークの記載された山里産業の校正証明書は日本の国家標準にトレーサブルであることを証明し、ISOの維持管理に利用可能です。

校正による温度計の特性確認

温度計には特性があります。特性とは、ある温度の雰囲気で測定しているはずの温度計の表示がその温度より高い又は低い値を示すことを指します。この温度差は一般的に誤差と呼ばれます。誤差は温度計ごとに固有のものです。また、誤差は測定する温度が異なれば、大きくなったり小さくなったりもします。温度計を購入された際に試験成績書や校正証明書などが添付され温度計の初期状態の特性が明記されています。特性は使用により変化し、その要因は使用環境により熱履歴、振動、酸化など様々なものが考えられます。

氷と水が混ざり合っている状態の温度は約 0℃です。この温度は氷点と呼ばれます。氷点は容易に作ることができ温度の再現性に優れているため、温度計の種類によっては日常点検などによく利用されます。この氷点に購入された新品の温度計を挿し測定してみてください。おそらく0℃を示すことでしょう。しかし温度計は使用によってその特性が変化する可能性がある計器です。現在ご使用中の温度計は以前と変わらず0℃を示すでしょうか。
このような物性を生かした温度にはトレーサビリティはなく、あくまで点検です。また、ご使用されている温度範囲を考えると多くの場合0℃だけでは十分ではないことでしょう。

任意の温度においてトレーサビリティをとるには2種類の方法が考えられます。ひとつは当社のように社内に温度校正設備を維持管理し社内校正する方法です。もうひとつは温度校正を外部のJCSS認定事業者へ依頼する方法です。前者の場合、当社が使用する高精度な温度校正システムから現場で簡易校正可能なシステムまでをご提案いたします。また、後者においては当社は輸送が困難な温度計や温度指示計器は現地校正サービスも行っております。

校正によるメンテナンス計画の作成

温度計の寿命は使用環境により異なります。使用環境とは接触している媒体・熱履歴・振動などがあります。

測温抵抗体や熱電対にはJISやIECなどの規格が適用されます。この規格において形式試験が要求され、あらかじめ定められた条件には適合します。しかしながらこの形式試験は短期的なもので、実際の運用に即した長期的な試験ではありません。実運用での温度計の劣化はやはり実際に校正して確認する必要性があります。

温度計や温度指示計器を定期的に校正することは高圧ガス保安法など法令で定められているほか、温度特性の経年変化を可視化することができます。校正結果の蓄積は劣化予測とリスクによる校正周期の設定や交換時期を予測するなどメンテナンス計画にも有用です。