温度を伝える

山里産業が伝えてきた温度

温度の単位

温度とは物体の温かさ・冷たさを表す尺度であり、熱エネルギーの状態を数値で表したものです。 その温度の表し方(単位)にはいくつか種類がありますが、代表的なものを紹介します。

セルシウス温度 [℃]
セルシウス温度[℃]は1742年にアンデルス・セルシウスが決めたもので、日常で使われている最も馴染み深い表現方法でしょう。また、摂氏温度ともいわれています。

セルシウス温度を具体的にどのようなものか説明すると、水の氷点を100℃、沸点を0℃としたものです。
ここで、表現方法が現在と逆ではないかと思うかもしれませんが、後に水の氷点を0℃、沸点を100℃とする現在の方式に改められました。

アンデルス・セルシウス(1701~1744年)
スウェーデンの天文学者。
1730年から1744年までウプサラ大学で天文学の教授を務めました。

ファーレンハイト温度 [℉]
ファーレンハイト温度[℉]は1724年にガブリエル・ファーレンハイトが提唱したもので、現在は、アメリカで使われている表現方法です。また、華氏温度ともいわれています。

ファーレンハイト温度を具体的にどのようなものか説明すると、水の氷点を32℉、沸点を212℉としたものです。
ここで、基準となる数値が中途半端であると思うかもしれませんが、日常的に使う温度にマイナスの値が出ると不便と考え、このような数値設定になったとされています。(諸説有り)

ガブリエル・ファーレンハイト(1686~1736年)
ドイツの技術者、物理学者。
1713年頃に水銀温度計の実験を始め、1724年に水銀温度計を発明しました。

熱力学温度 [K]
熱力学温度[K]は1848年にウィリアム・トムソンが「温度が物体中のエネルギー総量を表す」という概念を導き、そのエネルギーの運動が停止する温度を0Kとした表現方法です。また、絶対温度ともいわれています。

熱力学温度はセルシウス温度と同じ目盛りであることから、0Kはセルシウス温度で表すと-273.15℃となります。これは熱運動という温度の本質に基づいてつくられた温度なので、物理では、よく使われており、換算式は以下になります。
T[K] = t [℃] + 273.15

初代ケルビン男爵ウィリアム・トムソン(1824~1907年)
イギリスの物理学者。
熱力学温度の単位であるK:ケルビンは爵位に由来するケルビン卿にちなんで付けられました。

日本の温度標準

温度そのものはITS-90(International temperature Scale 1990)と呼ばれる1990年度に国際的に定義された温度値が現在使われています。
例えば水の三重点の実現温度は0.01℃など、さまざまな純金属の融解温度、凝固温度をその再現性の良さから金属種を定めて、各国の国立研究所より各金属の凝固温度などを持ち寄り国際度量衡局(BIPM)が中心となって定義しております。

日本の標準温度は(独)産業技術研究所が代表となって、さまざまな温度値を国際会議に提供しています。当社は産業技術研究所との共同研究により定点セル(アルミニウム点、銀点など)並びに定点実現装置の開発を行い、高温側の温度標準の実現に協力しました。その定点セル、定点実現装置で実現した凝固温度が日本の温度標準として、国際的な温度値の取り決めの一助となっています。
つまり、当社の定点セル、実現装置が日本の高温側の温度標準を提供しました。定点セルの実際の製品は東京国立博物館の日本の温度標準器のコーナに展示されています。

山里の定点セルは日本のトレーサビリティ制度の最源流にあるともいえます。
ここからJCSS 認定事業者や各メーカの校正ラボの標準器へと温度トレースはつなげられ、さらには、さまざまな高精度な計測に使われる熱電対や抵抗温度計などの実用温度計へとトレーサビリティはつなげられています。
トレースのとられた温度センサが計測する温度値の正しさを温度計測のルーツである定点セルが担い続けています。

JCSSと山里産業の温度測定の歩み

JCSS(計量法校正事業者登録制度)はJapan Calibration Service Systemの略で、世界標準に合わせて設定された国家計量標準とトレーサビリティを満たす校正が可能で、かつ国際規格(ISO/IEC17025)に適合し、技術・運営能力ともに高い水準を持つ校正事業所が登録しています。
山里産業標準室は国際MRA対応JCSS認定事業者で、JCSS0037は当社標準室の認定番号です。

JCSS 年月 山里産業
旧計量法を全面改正した新計量法を制定。 1992年5月
新計量法が施行。JCSS発足。 1993年11月
1994年8月 日本計量標準供給制度認証資格(JCSS:抵抗 0-200℃)取得。
1997年4月 日本計量標準供給制度認証資格(JCSS:ガラス製温度計 0-200℃)取得。
APLAC MRAに加盟。 1999年12月
ILAC MRAに加盟。 2000年11月
計量法が改正施行。認定事業者の階層制導入へ。 2001年4月
2001年7月 JCSS認定温度範囲拡大 -40~420℃、ガラス製温度計 -50~350℃。
2004年10月 JCSS認定温度範囲拡大 -40~1100℃。
計量法が改正施行。認定制度から登録・更新制度へ。 2005年7月
2006年4月 温度計現地校正のJCSS認定を取得 -30~1100℃(日本国内初)。
2007年9月 JCSS認定温度範囲拡大 -40~1554℃。
2009年1月 JCSS認定温度範囲拡大 -196~1554℃。
2017年4月 放射温度計のJCSS認定を取得 600~2000℃。