基礎知識

熱電対の種類と特徴

JIS規格 - 貴金属熱電対

 種類 特徴
B熱電対
(白金・ロジウム30%-白金・ロジウム6%)
白金にロジウムの含有量が増すにつれ、融点及び機械的強度が増します。
また、両極にロジウムを含有するB熱電対は、R及びS熱電対に見られる使用中に生じるプラス脚からマイナス脚へのロジウムの拡散による熱起電力の特性の劣化がほとんど見られません。
さらに酸化性、中性雰囲気中での連続使用が可能であり、還元雰囲気中でも一般的にはR熱電対にくらべて長寿命を有しています。
R・S熱電対に比べ高温で使用できるため、特に高温域での”精密測定と耐久性”を要求される場合はこの熱電対をお勧めします。
ただし、低温域では熱起電力がきわめて精度が低いため精度は劣り、600℃以下での使用には適しません。
また、常温域では補償導線が不要になります。
R熱電対
(白金・ロジウム13%-白金)
精度がよく、ばらつきが少ない熱電対です。また、耐酸化性・耐薬品性に優れます。
標準用としても使われる熱電対です。
ただし、真空中・還元雰囲気(特に水素、金属蒸気)での使用は避けてください。
S熱電対
(白金・ロジウム10%-白金)

JIS規格 - 卑金属熱電対

 種類 特徴
N熱電対
(ナイクロシル-ナイシル)
長年にわたり広く使われているK熱電対の欠点を補うために開発された熱電対です。
K熱電対よりも耐酸化性と長期安定性に優れ、1000℃以上での高温では熱起電力の長期ドリフトがK熱電対の1/2~1/3で、1250℃でも比較的長時間使用できることが立証されています。
また、K熱電対と同様に還元雰囲気での使用には適しません。
K熱電対
(クロメル※1-アルメル※1
現在、工業用の熱電対として最も使用され、信頼性の高い熱電対です。
この熱電対は比較的耐熱性・耐食性にすぐれ、約1200℃までの使用が可能であることに付け加え、起電力特性の直線性が良好なのが特徴です。
還元雰囲気及び酸素分圧の低い条件においては、クロメル※1線の劣化”Green Rot”と呼ばれる選択酸化現象が起こり、このため短時間に起電力が大幅に低下し、大きな誤差を生じることがありますので、仕様の際しては充分な注意が必要です。
また、硫黄ガスに対して極めて弱く、短期間に熱起電力及び機械的強度の劣化が生じます。
E熱電対
(クロメル※1-コンスタンタン)
工業用熱電対としては起電力特性が高く、熱伝導性が低いため、熱伝導誤差が少ないことが特徴で、分解能の高い測定が可能です。
さらに、使用温度範囲が近いJ熱電対と比較すると耐酸化性、耐食性に優れます。
大型火力発電所、原子力発電所等で広く使用されています。
また、K熱電対と同様に還元雰囲気での使用には適しません。
J熱電対
(鉄-コンスタンタン)
水素や一酸化炭素などの還元雰囲気に強く、炭素との結びつきが弱いので安定しています。
また、熱起電力特性がE熱電対の次に高いことが特徴で、比較的安価な熱電対です。
ご使用に際しては、水分を含んだ酸化雰囲気中では鉄の酸化が激しいため、充分な注意が必要です。
T熱電対
(銅-コンスタンタン)
T熱電対は比較的低温域(-200~300℃)に用いられ、弱酸化雰囲気または還元雰囲気での使用に適します。
常温から低温域まで直線性がよく熱起電力が安定しており、取り扱いが容易であることから実験室などでよく使用されています。
ご使用に際しては、熱電対の熱伝導度が高いので、測温対挿入深さ不足により生じる計測誤差に十分な注意が必要です。
銅が高温で酸化しやすいので、測定温度に制限があります。
C熱電対
(タングステン・レニウム5%
-タングステン・レニウム26%)
高温域での使用を目的として開発された熱電対で、約2300℃までの測定が可能です。
タングステンが酸化されやすく、還元性または不活性ガス・真空中での使用を条件とします。
2015年度の改定により、JIS規格に加わりました。

※1:アルメル「ALUMEL」、クロメル「CHROMEL」はConcept Alloys, Incの登録商標です。

JIS外

 種類 特徴
40:20PR熱電対(白金・ロジウム40%
-白金・ロジウム20%)
B熱電対よりさらに高温での使用が可能ですが、起電力は小さくなります。
使用上の取り扱いに関しましてはB熱電対と同様です。
PLⅡ熱電対
(パラジウム・白金・金-パラジウム・金)
還元雰囲気に強く、水素雰囲気での使用が可能です。
金鉄/クロメル※1熱電対
(金・鉄-クロメル※1
-269℃まで測定が可能な、極低温用に開発された熱電対です。

※1:クロメル「CHROMEL」はConcept Alloys, Incの登録商標です。